啓蟄の日と味の記憶

今日は二十四節気の一つ啓蟄の日だ、彦根城お堀端の松から松に巻かれていたコモが取り払われる様子が報道されていた。
このニュースを見ると必ず思い出す味に関する記憶がある。
ソテーしたレンコンと金目鯛の煮付けだ。
もう随分旧い記憶だが非常に鮮明に思い出すのだ。

現役時代のほぼ3分の1は情報システム関連の仕事に関わっていた。
自分自身がプログラムを書くわけではなかったが、「虫」には大変悩まされていた。
新規システムやシステム変更の時などでは、テストにテストを重ね上でゴーサインをだすのだが、それでも思わぬ虫(Bug)がいてシステムが正常に稼働しないことがあるのだ。

ある新規システムのBug潰しが終わった時だった、「今日は啓蟄の日だ、オマエさんは虫が出るのは嫌だろうが、虫殺しが終わったのを祝して飲みに行こか」と直属の上司ではなかったがSさんが誘ってくれた。
Sさん馴染みの小さな呑み屋だった。
そこには厳選された酒があり、料理の上手い老女将がいた。
この時食したのが、厚めに切ったレンコンをじっくりソテーしたものに、女将の秘伝だという塩が振りかけてあった。
その塩のことは、かなり後になって知ったのだが岩塩にハーブを何種類か混ぜあわせて造ったクレージーソルトだった。
肉厚のレンコンの甘みと岩塩の風味のバランスが何とも言えず美味かった。
金目鯛の煮付けも絶妙だった。ことに添えられていたゴボウの美味かったこと。

これらの味の記憶を頼りに、Cookingを始めてから何度も挑戦しているが、感激した味には程遠いものしか作れないでいる。
味の記憶、五感の記憶の中で最も再現性の低い記憶が味の記憶だといわれる。
美味い、美味かったという記憶はあっても味の中身(成分)など思い出せないのは当然かもしれない。

啓蟄 虫 Bug 。明日は快晴のようだ、虫撮りに出かけよう。