キジを追いかけて

長い午睡の後、雨上がりのフィールドへキジの様子を見に行く。後部座席からカメラや三脚を取り出していた時、背後からブッブッと警告ホーンを鳴らされ、軽トラが止まった。田んぼ道へ入るすぐ横に車を停めていたから邪魔だと言われるのではと思い顔を上げた。軽トラから降りてきたのはキジの情報をよくくれるNさんだった。近寄ってくるなり「内の裏の草むらにキジのつがいが居よるよ」「此処からは見えんが、あの草むらの横あたりよ、田んぼ道通って廻り込んだら見えるかもわからん」。軽トラを飛ばしてわざわざ教えに来てくれたのだ。お礼を行って雨上がりの水溜りが点在する田んぼ道を急いだ。目的の場所にたどり着き草むらを探し回したがキジの姿は見当たらずだ。しばらくその場でキジが現れるのを待っていると、自宅の庭先に立ったNさんが頭の上で手を振り、その手を前方に向ける。そしてこっちに回って来いという合図を何度かしてくれた。Nさんは双眼鏡を持ち出してキジの様子を探ってくれているのだ。

小走りに出向くとNさんは自宅の前の道路にまで出て私を待ってくれていた。Nさんに案内され広い庭を横切ってキジが見える場所まで忍び寄ったが、キジはもうそこには居なかった。しばらく雑談した後、元の道を引き返していてキジの夫婦連れを見つけた。

足元の悪い畦道を通り近づく。Nさんの言っていたように未だ若いペアのようだ。人馴れしていないのだ、あっという間に草むらに逃げ込み姿を消した。間合いを計って三脚を立て姿を現すのを待つ。草の茂みに赤い頭を見つけ、下校中の小学生が通りかかるのを待って1ショットを試みる。小学生が近づくまでは草むらから立ち上がっていたのに、1チャンスの時には身を沈めてしまったのだ。

小学生が遠ざかってしまうとキジは再び姿を見せた。

メスが姿を見せるのを待ったが見かけることはなかった。コヤツは遠ざかっていき草むらに隠れ、姿を見せることはなかった。

三脚からカメラを下ろし三脚もたたんで帰途につく。草深い畦道は雨のしずくが残っており膝から下はびっしり濡れた。車の近くまで帰って振り返った時、思わぬところにキジを見つけ引き返す。メスも同伴だった。

夫婦揃って草の実をしきりに啄んでいた。

本日曇天なれどいい一日だった。Nさんがわざわざ軽トラを出してまでキジのことを教えに来てくれなければ、鳥撮りは不作だった。一日不作一日不食になるところだった。