荒廃する棚田

比良連山の南の端霊仙山の山麓にある栗原の集落は、比良山系山麓の在所の中でも非常に旧い集落の一つに数えられるという。
喜撰川の上流部の両側に広がる棚田は、石積みの土手を持つていたりと見事なものだ。
しかしここにも休耕田や放棄田が増えており、寒々とした光景が目につくようになっている。
2005年春に撮った風景は老夫婦の田拵えの様子だったが、その棚田は今では余りにも無慙な姿に変ってしまっている。


あの時老夫婦に声を掛けた棚田の道は、背丈ほどの笹とカヤが行く手を塞ぎ、イノシシや鹿の足跡が続くけもの道になり果てている。

「ご先祖様から受け継いだ田圃ですから、ボチボチでも耕しておかないとね。田圃一枚守るのも爺さんと二人では大変ですよ。」
話しかけた時老婆は愛想のいい応答をしてくれた。

この棚田の荒れ方では老夫婦には田を守る後継者はいないのだろう、それにあれから7年という時間が過ぎている、ご存命だろうか。

梅の咲く頃には必ず三脚を据えた棚田へは薮漕ぎをしなければ辿りつけない状態だ。
それに近くの農事小屋は崩れ落ち蔦などに覆われて姿が見えない。

荒廃する棚田、TPPの交渉如何はこんな荒廃する棚田を一層増やすことに繋がるのだろう。
原野に帰り始めている棚田や里山は見たくない。