ふきのとう

比良山麓の雑木林や棚田道を歩く。
目的は二つ、虫撮りとツクシ探し、かなりの距離を歩き廻ったが二つとも叶えられずだった。
ツクシの代わりに棚田の土手でふきのとうを見つける。


10日ほど早く、二月の終わり頃に見つけていれば頂いて帰り、蕗味噌や天ぷらにして早春のほろ苦さを味わえただろうに、花開いたふきのとうでは、いくら食いしん坊でも味わってみようという気になれないでいた。

「ほろにがさもふるさとの蕗のとう」という句が山頭火にある、山頭火はどんな料理をして早春のほろ苦さを味わったのだろうか。
「ひっそりと蕗のとうここで休もう」 山頭火


ふきのとうを撮った棚田の土手には人の手が入っていたが、近くでは原野に還ってしまっている棚田が幾つも散在している。


クマザサの中を藪漕ぎしなければ近づけなくなっている農事小屋。
この農事小屋の壁にもたれ春の陽射しを楽しみながらおにぎりを食べたこともある。
20年近くも前だ、あの頃はこの小屋も小屋の周りの手入れの行き届いた棚田にも、春の息吹が感じられた。
周囲にはふきのとうもツクシも生えていた。
農事小屋へ通じる道端にあった柿の木も老木になり半ば以上枯れかかっている。
悲しくなる。