老いのかたち(11)

13・14日と法事のため故郷に帰っていた。
離郷して半世紀が過ぎている。
この歳月の流れは子供の頃見ていた風景を変えてしまっており、思い出につながるものは全く残っていない。
それに在所には訪ねて行ける人も居なくなっているのだ。
半世紀という時間の流れ、諸行無常が理りとは言え寂しさが突き刺さってくる。

風景が様変わりしていくように人の相貌も変わってしまっていて、仮に町中で昔の知人や同級生に出会ったとしても、余程のことが無い限りお互いに旧友として認知することも無く通りすぎることだろう。
老いているのだ。

老い、2・3年前までだったら苦痛に感じることもなかった往復600KM程のドライブが、今回はかなり厳しく感じていた。
老い、味覚も相当に我儘になっている。
帰郷した時は、落ち着けることと料理が美味いということで、ここ10年ほどの宿泊は金毘羅さんの麓にある「紅梅亭」にしている。
いつもは料理が全品楽しみだったのに、今回は2品苦手にしたものがあった。
オリーブ牛ステーキトリフソースとまぐろ竜田揚げ海鮮ソース温玉のせだった。


カミサンは美味しいですよと食していたが、私はいずれも一口食しただけだった。
どうにも味が合わなかった、老兵の味覚の変化だ。
瀬戸内産真蛸と讃岐地鶏の薄葛鍋、コイツはとても美味かった。

味覚の変化、ますます我儘になる味覚、これも老いの表れだろう。
これから先味覚にどんな変化が起きてくるのだろうか。