老いのかたち(42)

予約しておいた本が準備できましたというメールを貰っていたので図書館へ行く。
いつもは車なのだが日頃の運動不足解消にと歩くことにし、少し遠回りして図書館へ向かう。
歩いたことで、見慣れていた風景がいろいろと変化していることに驚く。
時の流れに全てのものが変化していくのは自然の摂理とはいえ、驚くことが多かった。

田んぼ道の中に、石積みをひと工夫して窪ませ石塔と野仏を安置したところがある。
この野仏にはいつ見ても花がそえられていた。
時季によっては供物が供えられたり線香が燻っているのを見たこともある。
石仏に赤い前掛けをかけたり石塔を洗ったり、世話をしていたのは小柄な老夫婦だった。

今日、通りすがりに見るに、野仏の前に花はなく雑草が伸びている、赤い前掛けも全くその色を失い、風雨にさらされ続けてきた時の流れを感じさせる。

長い間放置されていたようだ。
あの老夫婦はもういらっしゃらないのだろうか。

古い在所の一角に、屋根は半ば傾き、土壁は所々落ち、板戸も外れかけているという廃屋があった。その庭には柿の古木があり、ヒヨドリやスズメ時には渡来してきたアトリたちがその熟柿を啄みに来ることもあったから、格好の鳥撮りのポイントだった。
そんな廃屋も柿の木も消え、鳥撮りのために隠れ場所を提供してくれていたウバメガシの生垣も消え、新しい住宅が建っているのだ。
鳥撮りの場所が一つ消えた。

時の移ろい、諸行無常、老いを考えていた。