雑踏の中で

久しぶりに京都へ行く。鄙から出て来た老爺が都の人混みの中をよろよろと歩く。雑木林や棚田、湖岸での虫撮りや鳥撮りはほとんどが独りぽっちの世界だ。そんな場所から雑踏の中に出るとまるで異世界に迷い込んだようで言いようのない圧迫を感じていた。人の多さとその喧騒に驚き、背中を突き飛ばされる感じに身をすくめていた。こんな感じが京都へ来るたびに膨れ上がっていくようだ。

写真ギャラリーを何ヶ所か見て廻るつもりだったが、雑踏の中で疲れを感じ始め思いは叶わずだった。人通りの少ない路地の薄暗い喫茶店に逃げ込み、一時間近く過ごした後、京都へ出た折には必ず立ち寄ることにしている人形店・田中彌へ行く。

内裏雛を見る。

f:id:gagambow23:20200127224112j:plain

もう随分以前だが、このショーウインドウで小さな木彫りの内裏雛を見た記憶がある。素晴らしい作品だった。小さな一品だったがえっ!と驚くほどの値札が付いていたことを覚えている。作者名もあったが名前は思い出せない。

雑踏の中を歩きながらいろんなことを考えていた。