老いのかたち(23)

パソコンで調べものをしていて何の脈絡もなくカリンの花のことを思い出す。
矢も楯もたまらず見たくなっていた。。
急ぐ調べ物でもないからと自分に言い聞かせ、作業を中断してカリンの花を見に行く。
道々、何故カリンの花のことを思いだしたのか考えていたが、思い当たるものは無かった。

何時の頃からだろうか、時折、調べ物や読書している時、好きなパズルに夢中になっている時などに、その時の作業とは全く関係のない事を不意に思い浮かべることがあるのだ。
不意に思い浮かべたことを暫くの間ボケーッと考えていたりする。
一つの事を起点にして次から次へと連鎖が起き、それこそ脈絡のない事柄や風景が繋がっていくのだ。

ボケ始めたかとそんな自分が心配になる。

目的のカリンの木は旧在所の小さな無住の寺の庭にあるのだ。
相当な巨木だったが3年ほど前に幹の半ばから切断され、今は見る影もない哀れな姿になっている。



何故こんな無惨な姿にされたのだろうか。
老いさらばえて倒れかかっていたわけでもない、台風で枝折れしていたわけでもない。
このカリンの木はどんな事情があって伐られたのだろうか。
この木を見上げる度に妙な寂しさを覚えていた。

花の時期にはまだ早かったようだ。
梢に一輪のカリンの蕾を見つけほっとした。
昔のように沢山の花はつけないだろうが、この蕾が花開く頃を見計らってもう一度見に来よう。