梅雨の晴れ間を見計らって虫撮りに出掛ける、目的地は小さな谷間を越えた向の畑だ。
谷間に降りる細道は、通行を拒むかのようにクマザサが伸び、葛がその上に覆いかぶさっていた、ところどころに野茨も伸びているのだ。
一脚を杖代わりにして草道に踏み込むことも考えたが、葛に足をとられることもありと思い断念し、目的地へはかなりの遠回りになるが平坦な道を行くことにした。
人の手の入らぬ畑は荒れ放題になりあっという間に原野に帰っていくようだ。
目的の畑の一角には、大きな栗の木が2本とこれも大きなザクロの樹が一本ある。
栗の木は花の最盛期、栗の木固有のあのむっとするような臭いを放っている、ジョウカイボン、アシナガバチ、ハナムグリ、クロマルハナバチなどが来ていた。
ザクロの樹では、木の大きさの割には僅かばかりの花が着いていた。
ザクロの樹の下は思いもかけぬ小宇宙が広がっていた。
カミキリの仲間、トラガ、ナナホシテントウ、キマダラセセリ、ムネクリイロボタル、ヒシバッタの仲間、等などがいたのだ。
このほかショウリョウバッタの幼体、クサキリの幼体、クサグモ、カナブンなども見た。
今日は虫撮り用の重装備で出掛けたのだ、小雨がぱらつき始めなければザクロの樹の下で粘っていたかつたが、本降りになる前にと引き上げる。
途中で大粒の雨になる、避難場所のお寺まで小走りだが老躯の歩みだ、雨中を歩く自分の姿を思い、蹣跚(マンサン)という言葉を思い出していた。
小さな無住のお寺の縁側に座り込んで暫くの間雨が通り過ぎるのを待つ。