ヒサカキとハナニラ

小さな谷間の畑の急道を登り畑の上に顔を出した時、春のニオイの一つヒサカキの臭いを嗅ぐ。
ニオイの元はかなり離れているが風に送られ漂って来ているのだ。



このニオイは悪臭の部類に属するから、この臭いが好きだと言う人はあまりいないだろう。
都市ガスの臭いに似ている。
そんな臭いではあるが、私には少年時代の故里の山野を思い起こさせるニオイ、懐かしさのあるニオイなのだ。

このニオイのする頃、悪童仲間と雑木林へワラビ採りによく出掛けていた。
ワラビの採れた量によってはそれなりの小遣い稼ぎになったのだ。

悪童仲間だったOもMもFとも音信不通になって久しい。
僅かに当時の声音や顔貌を思い出すことが出来るが、彼らは今も健在だろうか、どんな爺さんになっているのだろうか。

ヒサカキの近くの斜面ではハナニラが満開だった。
昨年よりも花の数が増えているように思われた。
少年の頃このハナニラを見たという記憶はない。

今日初めてツバメを見た。
いつ頃から飛来してきていたのだろうか。