ユスリカ

写真展の受付当番をしていてガラス窓にユスリカが止まっているのを見付ける。
びわこ虫」とも言われているオオユスリカだ。

このユスリカをみると決まって思い出す人がいる、旧い知人のFさんだ。
一昨年の5月24日のブログにも、写真展の当番をしていて窓に来たユスリカを見つけFさんのことを思い出していた事がかかれている。

Fさんとの関係はもう随分昔のことなのに、いろんなことが実に鮮明に思いだされるのだ。
小さなデザイン事務所を構えていたFさんは、仕事半分遊び半分、どちらかと言えば遊びに割く時間のほうが多いのではないかと思われるような人だった。

趣味の一つが渓流釣り・フライフィッシングだったから、おおっと思うほどの毛鉤を持っていた。
その中にユスリカに似せた手作りの毛鉤が幾つもあり、釣行の経験から釣りに出かける川に合わせてフライを作るのも楽しみの一つなんだよと自慢の毛鉤を見せてくれたこともあった。

河原で塩焼きにして食うイワナの美味さ、焼いた山ウドや根曲がり竹の美味さ、渓流釣りの自慢話の時には必ず釣り上げた魚や山菜の話が出てきた。
身振り手振りも混じえたFさんの話はとても面白かったから、いつ聞いても聞き飽きることがなかった。

ユスリカを見るとそんなFさんを思い出すのだ。

未来を夢見ることができなくなっているから老兵は思い出を喰っているのだ。
ちょっとした切っ掛けでいろんな思い出が喰える幸せ、これも歳歳年年減少してゆくことだろう。
呆け果てた人はどんなものを喰っているのだろうか、ふとそんなことを考えていた。