ユスリカ

白いバラの花びらの上にいるユスリカを見つける。

この10mm足らずのユスリカを見ると決まって思い出す人がいるのだ。
仕事の関係で知り合ったFさん。
Fさんが故人になられて10数年になるが、ユスリカを見ると渓流釣りに連れて行ってもらったことを筆頭にさまざまなことを鮮明に思い出すのだ。
ユスリカとFさんのことをブログに書き留めたことがあり、調べてみると、不思議にも3年前の同じ5月24日の日付で書き留められていた。

ユスリカがきっかけで次から次へと連鎖していく遠い過去の世界。
年老いた者は未来が喰えないから過去の出来事を喰うという。
幸いなことに苦くて吐き出してしまわなければならないようなものは、もうほとんど残ってはいないのだ。
楽しみながら過去の出来事が喰えるということは、幸せなことだと言わねばなるまい。

ユスリカの仲間は南極にもいるしヒマラヤの標高5.600mの氷河でも発見された、こんなことを教えてくれたのもFさんだった。
フライフイッシングのための毛鉤の作り方を教えてくれたのも、河歩きの仕方を教えてくれたのもFさんだったし、遊びは遊び故に全力を上げて真剣に取り組め、と言ってくれたのも、Fさんだった。

呆け暮らしをしないように全力で遊ばなくてはなるまい。