越冬キチョウ

琵琶湖博物館ホールで「琵琶湖 自然と文化」と名付けられた講座の最終回の日だ。
講座の始まるまでの間、博物館の周囲の林で越冬から目覚めたであろう蝶たちを探そうと早めに家を出る。
この林はいろんな樹木の植裁された人工林だが、木が植えられてから17年近く経っていることと、管理も行き届いていて、一部には里山の風情もあるから、ウラギンシジミ、キチョウ、ムラサキツバメ、テングチョウなどの成虫で越冬する蝶たちが見られるのではと思ったのだ。

陽当りの良い枯葉の上で日向ぼっこしているテングチョウを見付けそっと近づくが、素早い動きで林の中へ逃げられてしまう。
テングチョウが飛ぶ時に見せる前翅裏のオレンジ色の紋が、あっという間に木間に消えると、2度と見つけられずだった。

少し離れた枯葉の上にキチョウがいた。


用心しながら近づくがキチョウも敏感に反応して飛び回るから、飛翔体を抑えるのは大変だ。
枯葉の間に身を隠すように止まったり、少し近づくだけで飛び立つ、キチョウに翻弄され続けていた。



今日の講座は「古代近江の製鉄遺跡」・大道和人(安土城考古博物館 学芸課主任)と「琵琶湖周辺の金属鉱床と草津木瓜原遺跡出土のエキゾチックな鉱石」・冨田克敏(九州文化財研究所 顧問 理学博士)の2講座。

「琵琶湖周辺の金属鉱床と草津木瓜原遺跡出土のエキゾチックな鉱石」は初めて聴く内容だっただけに非常に面白かった。

草津木瓜原遺跡は古代近江における製鉄コンビナートといわれるほどの規模を持つ遺跡という事は承知していたが、そこで製鉄原料として用いられた鉄鉱石の産地が琵琶湖周辺産ではなく、韓(朝鮮)半島北部の咸鏡北道産の可能性が非常に高いとの説明なのだ、これには驚いた。

冨田克敏氏は木瓜原遺跡出土の鉄鉱石の特徴を各種の科学的手法を用いて調べられ、遺跡出土の鉄鉱石はこれまでに琵琶湖周辺では発見されたことのない鉱石であり、また、日本列島の鉄鉱床でも類例がない、特別な鉱物組み合わせを持つ鉱石であると指摘されているのだ。
韓半島から日本海を渡って琵琶湖の湖南地区にもたらされたとのことだ。

えっ!とかおおっ!という思いだった。
岩石学とか鉱物学からの分析で鉄鉱石の特徴と産地の同定には否は無いが、何故製鉄原石をわざわざ運んでくる必然性があったの?、製鉄したものを持ってくるほうが余程理に適っていませんか。いくら古代人であったとしてもいわゆるコスト意識は持っていたでしょうに。
そんな思いでいた時、全く同じ考えをした人がいて質問の時間に手を先に挙げられた。

越冬キチョウが撮れたし講座も満足だった。本日好天なりだ。