風もなく穏やかで暖かい陽光に誘われて、栗原の棚田へ出掛ける。
昨年まで見かけることのなかった獣よけの鉄柵が、棚田や集落を取り囲んでいる。
イノシシ等の足跡をこの棚田の土手やあぜ道で見かけたのは、もう随分以前からだが、鉄柵を設けなければならないほど獣害が酷くなったのだろうか。
真新しい獣よけの柵は延々と続いている。
農家の人は相当の出費を強いられたのではなかろうか。
棚田の土手でフキノトウを探し歩く。
目星を付けていた所は放棄田になってしまっていた。
フキノトウが芽を出せるような環境ではない、カヤの生い茂る荒地になってしまっているのだ。
2005年のファイルにこの場所で撮ったフキノトウがある。
この時の棚田には人の手が入っていたから眺めていてもどこか心落ち着くものがあったが、荒れ果てた農地を見るのは寒々と寂しい。
「ご先祖様から受け継いた田じゃけんな、ぼちぼちでも稲づくりしてやらんと申し訳ない」
「婆さんと二人で田を守っていけるのも何時までじゃろか」
あの時の老夫婦はご健在だろうか。
これだけの荒地だ、もういらっしゃらないのかもしれい。
もうここではフキノトウ探しも出来ずだろう。