変貌

一年ぶりの故郷だ。
小高い場所にある墓の掃除をしながら眺める風景は一年前と同じでは無い。
昔ながらの田園風景は年々少なくなり、去年は見られなかった道が田圃の中に造られている。
それに最も変化の少ないはずの墓地の様子も変わっているのだ。
新しい墓石が建つのになんの不思議もないが、墓地の中から墓石がなくなり礎石だけが残っている箇所が幾つも見られるのだ。
ことに軍人墓地と言われていた場所にそんな箇所が目立っている。
この変わりゆく姿は何を物語っているのだろうか。
軍人墓地の墓の大半は太平洋戦争時のものだったが、日清日露戦争の時の戦没者の墓も幾つか見られた。それらも失くなっている。

風景が変貌してゆくように歴史も消えて行くのだろうか。
墓は別な場所に移されたのだろうか。
祭祀を行い墓守をする人が途絶えてしまったのだろうか。
さまざまな事を考えていた。

変貌それは諸行無常だ。