写真・タイトル

深草キャンパスでの講座の後は決まって写真展会場を三ヶ所廻っているが、昨日の雨の中では四条大橋を渡る気もせず、ギャラリー古都(河原町通)のみにした。
「京都丹平5人展」を観る。

久しぶりに おっ! という写真に出逢った。
野崎佳子さんの「憶」というタイトルの組み写真だ。
崩れかかる廃屋の瓦屋根、廃車、廃屋の庭と思われる葎の中のドクダミの花・・等を光を切り詰めて撮っており、モノクロ調のプリントの仕上げも階調の締まった素晴らしものだった。
会場の写真を一通り観た後いつもは直ぐに出口に向かうのだが、この時はこの組み写真のことが気になって後戻りした。

鋭い感性で切り撮った光景を「憶」という一字のタイトルで組み写真として結実している。
「憶」という字には、「口には出さず、あれこれと思いを馳せる、胸が詰まるほどさまざまなおもいにふける」そんな意がある。

「憶」というタイトルに託した作者の情感と意図を観るものが何処まで汲み取れるか、更に言えば作者が切り撮った小さな世界を観るものが何処まで広げられるか。
崩れかかる廃屋の屋根、打ち捨てられた廃車・・・・・・これら滅びゆくものの中に作者は何を見、何を感じたのだろうか。
見る者の感性をも問われるようなそんな作品だ。しばらく見入っていた。

素晴らしい組み写真だった。