記憶の断片

昨夜の雪も午後には日陰を残して大半が消えている。
ガラス窓越しに雪晴れの陽射しを受けていると暖かくてつい睡魔に襲われる。
RAW現像の作業を中断して午後から「ソフィーの世界」を読み始め、「アリストテレス」の章を読み進めていた時、突然「オブジェクト指向プログラミング」という言葉を思い出した。

30年以上も前の記憶にある言葉だ。
光の届かない深い井戸の底を覗き込むように、記憶に残っている断片を思い出している。
システムエンジニアでもプログラマーでもなかったが、概念として承知しておく必要があり勉強したことがある。
今では「オブジェクト指向」「クラスとインスタンス」「データメンバー」「ポインター」等幾つかの言葉を思い出すことは出来るが、それは字面の言葉のみで内容は殆ど思い出せないでいる。

コンピューター用語としてのこれらの言葉・概念は思い出せなくても、言葉の意味する断片をいじくり回しつなぎ合わせることが出来れば、「ソフィーの世界」を読み進めるのにいいかもしれない
と思ったりしている。

大地の下から掘り出された化石の骨格をつなぎあわせて一つの形を作り上げ、そこからその主が生きていた世界を想像するように、私も記憶の古層から幾つもの断片を探し出して繋ぎ合わせだ。
断片には、楽しい思いも苦しかった思いも、挫折感も達成感も、いろんなもの入り交じっている、苦味も多かったが、概して言えば最も充実した時期だった。

思い出した言葉を老兵の感傷にしてしまわずにもう一度調べなおしだ。