老いのかたち(20)

頂戴した年賀状に再度目を通す。
現役時代の頃は400枚近く貰っていた賀状も、年々減り今では100枚足らずになっている。
リタイアして13年目を迎えるのだ、歳月の経つのとともにそれぞれが疎遠になっていくのも道理だ。

今年は頂戴した年賀状の中に幾つか気になる賀状があった。
その一つが仕事関係で知り合ったONOさんからのもの。
・・・今年からまた山を始めようとトレーニングをしています・・と書かれていたのだ。
おっ!という思いで文面を読みながら彼の風貌を思い出していた。

彼は学生時代に単独でキリマンジャロに登ったこともある山男だったが、情報システム関係の仕事をしていた頃は多忙だった所為もあり山のことは忘れていたはずだ。
長い付き合いだったが山に行ったという話は聞いたことがなかった。

ONOさんはキリマンジャロのことを思い出しているのだろうか。
老境に入りつつある今、山登りのためにトレーニングを開始する、用意周到なONOさんらしい。
呆け暮らしが続いているお前さんが見習わなければならない老いのかたちですね。
自分に言い聞かせていた。

ONOさんの風貌や大柄な体躯を思い浮かべていて、不意に伊勢神宮外宮で見た巨木のことを思い出していた。