写真「国道45号線」を見て

Webで調べ物をしていてアサヒカメラnetに行き当たり、何気なくクリックしたページで「国道45号線」(阿部稔哉)と名付けられた36枚の写真を見る。
3・11のあの大惨事の写真だ。

被災地から遠く離れた琵琶湖畔に住む私の中ではあの大災害はいつしか風化し始めていたが、この写真を見て再び悪寒と震えと目眩のするような怯えを感じた。
TVに映し出されていた恐ろしい光景(動く映像)とは異なる恐ろしい光景を見せられた思いだ。

静止画であるが故にその情景の隅々まで、或は気になる一点に目を凝らし見続ける事ができる。
そしてそこに想像の空間が広がるのだ。人っ子一人いない傾いた家並みと瓦礫の中に延びる白く乾いた街路の写真、この写真は押寄せる巨大な黒い津波や押し流されてくる車を想像させ、突き上げてくるような怯えを感じさせる。思わず身震いしていた。

自分が現実のこの白く乾いた街衢に立った時ちゃんとレンズを向けられるだろうか。
とてもじゃないが立ちすくんでしまって震えているに違いない。
被災地から遠く離れた暖かくて安全な場所でひねもす、のほほん、のんべんだらりと過ごしている人間にあの風景は撮れるはずがない。

阿部さんはこの「国道45号線」をこれからも撮り続けるという。
どんな思いでこの風景にレンズを向け続けていくのだろうか。
ご活躍をお祈りしたい。