スズバチとオオセイボウの争い

8月28日の朝偶然にもジガバチの巣作りを見て以来、この巣作りを見るのが日課になった。
暇があれば巣の様子を見ている、玄関を出入りする時には決まって覗き込んでいる。
こんなに一つ事に熱心になったのは初めての経験だ。

今朝もPUKUさんの散歩の行き帰り、新聞入れの行き帰りと何度も見に行く。
その度に巣の様子が変わっているのだ。

巣の土壁は日毎に厚くなり、2日程前から採土の場所を変えたのか黒っぽい土を運んできていたが、今朝は近くの建築現場に積まれている黄土で巣を厚くしている。
まるで巣に迷彩をデザインしているようだ。

何らかの意図があるように思えてくる。
スズバチ(私の勘違いでこれまでジガバチと称してきたが、このハチはスズバチでした。訂正し以後はスズバチと書きます)は何故かくも丹念に巣の土壁を厚くし、迷彩を施す必要があるのだろうか。

巣作りを覗き込む度に感じていたこの疑問の一つが、今日の午後解けた。
それは敵(寄生蜂)から産室を守るためだったのだ。
長い虫撮りの歳月を過ごしてきたが、寄生蜂・オオセイボウの行動もスズバチの行動も初めて見るものであった。

買い物に出かける前、巣に近づいてみると小さな青いものが速いいスピードで飛び立った。
一瞬のことだったのでそれが何者なのかは分からなかったし、スズバチが泥団子を持ち帰ったので、いつまで土壁の補修をやる気なんだろうと思いながら買い物に出た。
帰って観た時は特に変化は無かった。

遅い朝食を摂っていた時玄関先からカミサンの声、「青いハチが来てますよ」。
買い物に出掛ける前に見たあの青いものは青い羽根のハチだったのだ。

青い羽根を持ったハチ、それは寄生蜂の仲間、オオセイボウだった。
コバルトブルーの羽を持ったオオセイボウがスズバチの巣の上を歩きまわっている。
その様子をよく見ようと近づくと私を威嚇するように飛び立って来る。

100mmマクロでは危ないと思い180mmにレンズ交換して、間合いを取りながら驚かさないように少しずつ近づく。コバルトブルーの羽が輝いて綺麗だ。
ファインダー越しに覗いているとオオセイボウが土壁を齧って穴を開けている。

この行為を観た時私は、アッとなった。
オオセイボウが寄生蜂なのは承知していたが、こんな行動をするとは想像だにしなかった。

オオセイボウの穴掘りの最中にスズバチが泥団子を持ち帰る。
スズバチとオオセイボウの戦いが巣の上で始まる。
この時の争いはスズバチの方が強くオオセイボウはそこから飛び立った。
スズバチも間なしに飛び立っていった。

私はこの2匹がいない間にカメラをセットするための三脚を立て、リモートスイッチにした。
そんな作業をしているとオオセイボウが帰ってくる。

土壁の穴を齧って穴を大きくしようとし、穴のサイズを測るかのように時々お尻を穴に入れてみて、また穴齧りにかかる。
そしてその作業がおわると産卵の為に産卵管の出たお尻を穴に入れた。

3度目の産卵行動の時スズバチが帰ってきて争いが始まる。
スズバチが執拗な攻撃をオオセイボウに仕掛けるが、今度はオオセイボウの方が強く、スズバチを追い払い、産卵行動を繰り返したり、巣の上を歩き回っている。

2〜30分過ぎた頃だ。スズバチが泥団子を咥えて帰って来るなり、オオセイボウに体当たりするように攻撃を始めた。
今度はオオセイボウはあっさりと飛び立っていった。
オオセイボウの目的とする行為は完了していたのだろう。

スズバチは巣に開けられた穴の廻りを歩きまわったり覗き込んでいたが、暫くして飛び立つ。
そして泥団子を咥えて直ぐ帰ってきた。
オオセイボウの開けた穴を塞ぎにかかるのだ。

2度往復して穴を完全に塞ぎ、その後は何事もなかったようにいつもの土壁の補修にかかる。

今日はいいドラマを観せてもらった。
あの巣からどんなハチが飛び出してくるのだろうか、楽しみだ。

それからもう一つ楽しみがある。
書斎に来てくれたルリタテハの幼虫4匹のうち3匹が蛹化の前兆行動を起こした。
サナギになる瞬間を撮影したいがもう眠くなって起きていられない。(午前2時15分)
カメラをセットして寝ることにしよう。