虫撮りと読書(3)

昨年の夏は炎暑を厭わず虫撮りのために、雑木林に潜り込んだり棚田の道を歩きまわった。
それに比し今夏は随分と出不精になっている。
虫撮りに行きたいという気持ちと体がうまく連動しないのだ。
しばらくはこんな状態が続くのだろうか、どこかで強引にでも動きの鈍い体を雑木林に連れ出さなければ、この一夏呆けてしまいそうだ。

「森と氷河と鯨」読了した。
読みながらいろんな事を考えさせられ、久しぶりに本を読む楽しさを感じた。
「極北の動物誌」やこの本は書棚の最前列に置いて、何かに倦んだ時、気分転換に読んでみよう。

書棚の最前列と言えば、十数年も前からどんな時にも最前列に置かれている本がある。
古代ギリシャ世界全域を巻き込んだペロポネソス戦争アテネの興隆と衰退を書いた「戦 史」 (トゥーキュディデース 訳 久保正彰 岩波文庫)全三巻だ。

最初に読んだのはいつ頃だったのか覚えていないが、手にしてみると、下巻に挟まれていた遅延証明書近畿日本鉄道鶴橋駅長)と下巻の発行日が昭和42年8月16日第1刷発行となっていることから、私がまだ会社の寮にいた頃になる。40数年前だ。

夢中で読んでいたこと、2度読んだこと、そしてもう一度読み直そうと上巻の半分近くに挟んである栞が特製の栞であることを思い出している。
これまでの読書の中で3度も読み返そうとした書籍はこの「戦史」以外に記憶にない。

本は日焼けが激しく紙質は茶色っぽくなっているが、随分丁寧に扱っていた証拠に、薄いセロハン紙のカバーは所々すり切れてはいるものの今でもちゃんとかかっている。

ボケ防止の為に3度目の挑戦をしてみるか。
虫撮りと「戦史」これで一夏の呆けから救われそうだ。