虫撮りは午後からということにして、早朝のキジのフィールドへ行く。
出掛けてきて幸いだった、焼野で母衣打ちを撮った後フィールドを一巡するつもりでヨシ原の陰から農道へ出た時、非常に珍しい光景を眼にしたのだ。
猫のいるすぐ前の道をゆっくり横切るキジを見たのだ。
キジと猫はまるで知り合いという感じだった。それというのもキジは猫に一瞥してから胸を張って堂々と歩き始め、猫は尻尾を振ってキジを見送っているのだ。
猫が尻尾を振る様がなんともユーモラスだった。
キジが縄張りの草むらに姿を消すと猫も縄張りを見廻るのか、Cブロックの田んぼのあぜ道を遠ざかって行った。Cブロックの先の草むらにもキジがいるのだ、猫はソヤツが貌を出すのをかなり長い間寝そべって待つていた。
猫が動き出すのをファインダー越しに眺め続けていると背後から声が掛かる。
「いいのが撮れたかね」名前は未だ存じ上げないが顔見知りの老農夫だった。草刈の手を止め遠くの方からわざわざキジの情報を持ってきてくれたのだ。
老農夫が草刈をしている田んぼのすぐ近くの草むらに夫婦連れのキジがいたよ、という情報だった。お元気で草刈ですね、失礼ですが何年生まれですか、と何歳なのかは尋ねられてもお名前を訊くのは難しい。
穏やかな晩春 好日だった。