キジと農夫と

ざらしの田んぼにも草の芽がふきだし春の気配がし始めた。タネツケバナの小さな花の見える田んぼでカワラヒワの小集団が何かを啄んでいる。

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そんな小集団が一斉に飛び立つ瞬間を狙ってファインダーを覗き続けていたが、一向に飛び立たないのだ。一脚に載せたカメラから顔を上げたほぼ同時にカワラヒワの小集団が飛び立つ、欲しいものは手に入らずだ。やれやれという思いでカワラヒワの飛翔を追いかけていて、遠くの田んぼに黒い小さな姿を見つける。キジだ。ヤツはのんびりと餌探ししながらこちらに向かって来ているのだ。

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こちらからキジに接近せずヤツがどこまで近づいてくるか待つことにした。三脚やリモートスイッチなどを持ってきていれば、三脚にカメラを載せキジにレンズを向けて休憩できただろうに、枯れ草の上にカメラを横たえての一休みになった。

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人慣れたヤツだ。随分近くまでやって来る。フィールドには今年も4羽のキジ(♂)がいることをすでに確認している。こちらの姿を見るなり足早に遠ざかって行くヤツ、至近距離に近づいても悠然と餌を探しているヤツなどがいるのだ。個体識別するためのマーカーでもつけていればそれなりに付き合えるのに。そんなことを思いながらヤツの様子を眺めていた。

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ヤツは急ぐこともなく悠然と老爺の前を横切りヨシ原の中に隠れていった。

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このヨシ原は耕作放棄地の中で最も大きなヨシ原だ。田んぼ3区画分が何年も刈り取られることなくヨシが伸び放題になっているところなのだ。コヤツのねぐらだろうか。

このヨシ原の先で突然白い煙が上がった。年老いた農夫が小さな小さな田んぼの春播きの準備をしているようだ。

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先程隠れたヤツが農夫の背後にでも姿を現してくれると面白いシーンになるだろうに。

野焼きの煙のする中での、キジと農夫、そんな一枚が欲しかったが叶わぬ想いだった。