ドクダミの花

雑木林を抜けた雨上がりの道端で白い花の咲くドクダミの小群落を見る。

ドクダミにレンズを向けていて不意にSさんのことを思い出した。
Sさんは「野の仏たち」というテーマでさまざまな野仏や道祖神を撮っていた。
その中に、背の高いドクダミの群落の中に立っている2体の野仏を撮ったものがあったことを覚えている。
梅雨の晴れ間のドクダミの群落、そこに佇む2体の野仏を様々なアングルで切り撮っていた。
中でもローアングルでドクダミの白い花の上にお顔を覗かせている野仏の姿を撮ったものは、何とも言えず心落ち着く作品だった。

雪を被った野仏、レンゲ畑の中の仏たち、牡丹雪にストロボ光をあてて撮った真冬の野仏.......。
そんな野の仏たちの写真を撮っていたSさんがいなくなって、もう15年以上が経過しているのだ。
ドクダミの白い花、野のほとけの姿、いろんな思いが記憶の深みから顔を覗かせてくる。

老いるとは別れることだというが残された友人はごく僅かになった。