方向感覚を失う

カタクリの花のことをふと思い出し、マキノの雑木林へカタクリの花を見に行く。
雑木林に点在する花は遠目には見頃だったが、近づいてよく見るとどこかが傷んでいたり色褪せている、4月の初め頃に来ていれば新鮮で色鮮やかな花が見られただろうに。

林の中を一巡した後、背負っていたザックや手荷物をクヌギの古木の根方に置き、三脚と35-350mmを装着したカメラを持って新鮮な花を探しに歩き廻る。

これはと思うカタクリを見付け三脚をローアングルにして花の前に置きながら、望遠レンズよりも広角接写のほうがいいのではと、17-70mmをつけたカメラを取りに荷物を置いた場所まで戻る。
17-70mmを持って三脚を据えた所まで帰る途中新鮮なヤツを見付け膝を就く、数ショットし歩き出したが帰るべき三脚の場所が判らなくなっているのだ、あっ!となった。
膝を就いたことで方向感覚を失ったようだ。
三脚を据えたと思う場所へ向かい周辺を探しまわるが見つからない。
ローアングルにして地面に押し付けるようにセットしていたから余計見つけづらいのだ。

雑木林の中は何処も同じような風景だ、完全に自分の立ち位置を見失う、初めての経験だった。
(三脚は探しまわっていた場所とは逆の所で見付けた)
小さな雑木林の中で方向感覚を失ったことが老いを感じさせ、何とも表現のしようのない苦味が突き上がってきた。

お昼のおにぎりは雑木林の中で食べるつもりだったがそれもせず、ファインダーを覗く気にもなれず、逃げ出すように雑木林を出た。
お気に入りのカタクリは無い。