ワラビ

ガラス窓越しに射し込む陽光が暖かい。
ポカポカ陽気の中で「沙門ブッダの成立」を読みながらうつらうつらしていると、「PUKUさんの散歩お願いします」との電話が孫娘からあった旨カミサンが伝えに来る。
眠気覚ましと日頃の運動不足解消をと思い散歩に出掛けることにした。
冷たい風が吹いているから暖かくして出掛けるようにと言われ、ダウンジャケットを羽織る。
比良連山から吹き下ろしてくる風は寒の戻りということで確かに寒風だった。

小さな谷間の畑へ行った帰り道、畑の土手でワラビを見付け、今年の初物とばかりに頂いて帰る。

ほんの僅かなワラビだったが明日の食卓の一品にしようと軽くゆがいてアク抜きをする。
一品はスモークベーコンを細切りにしてワラビと炒め合わせ玉子とじにするつもりだ。

ワラビ、ワラビにも少年の頃の風景と結びついたいろんな思い出があるが、その風景の中にいる友達もその当時の風景も、長い歳月を経て変わり果てていることだろう。

山頭火の句にもワラビを詠んだものがある。
 足もと蕨が生えてのびやかな
 どこの山の蕨だろうと噛みしめて旅

 わらび干す筵の上の母の影    風来坊