沈丁花

買い物から帰って玄関の扉を開けた時、濃香な甘い匂いに思わず息を停めた。
一枝の沈丁花が濃密な甘い香りを漂わせているのだ。

ご近所のIさんが届けてくれた沈丁花だ。
頂いたのが買い物に出ようとしていた時だったので、在り合わせの一輪挿しに挿し玄関の下駄箱の上に置いて出掛けた。

買い物に出掛けていた僅か一時間ほどの間に、玄関先や廊下に濃香な匂いが溜まったのだ。
閉ざされた空間に漂う匂いは、ドロリと身にまとわり付くようで、香りの爽やかさを感じることは出来なかった。
沈丁花の匂いをこれほどまでに重苦しく感じたことはこれまでにない。

散歩の折などに遠くの方から漂ってくる沈丁花の仄かな香りは好きだが、これほどまでに濃香では息が詰まってしまう。

山頭火の句に「ゆっくり湯にひたり沈丁花」いう句がある。
思うに仄かに漂ってくる香りではなかろうかと。

* 昨日のワラビでワラビの山菜ずしを作るつもりだったが、カミサンに使われてしまった。
その一品は、ワラビとベーコンの細切りを炒め合わせて少し甘辛く味付けした玉子とじ。
改めてワラビ採りに行かねばならなくなった。