梅のつぼみ

夕方の散歩の折、荒れ果てた棚田の南斜面に在る梅の老木に小さな春が来ているのを見付ける。

ぷくっと膨らんだつぼみが何とも言えず可愛らしく思えた。

この梅の木を初めて見た頃は若くて樹勢が盛んだったから沢山の花を付けていた。それが老木になった今では僅かなつぼみしか付けていないのだ。
この木の下で肉厚の大きな落ち梅を拾ったこともある。しかし老木になってからは梅の実は随分小粒になっている。
大きな梅の実だったら落ち梅の甘酢っぱい発酵臭も楽しめるが、小粒になってしまった梅の実は拾い上げる気にもなれない。

棚田の斜面で長い間手入れもされずに放置されていた梅の木は、びっしりとウメノキゴケを纏い、樹幹のあちこちにノキシノブが着生している。
それに半ば腐りかけ折れた枝も残っているのだ、まさに老木の風姿なのだ。
梅も老い眺めている者も老いている。

梅の木の斜面の近くでタンポポも見た。
小さな春が来ていた。