般若心経は偽経か

昨日の佛大四条センターでの講座「般若心経-偽経説を考える」はとても面白かった。
講座の後で、その時に取ったメモとレジュメを何度も読み返すという事はあまりないのだが、今回の講座はいろんなことが気にかかり丹念に読み返している。

吹田隆道先生(佛教大講師)はジャン・ナティエ(インディアナ大教授)の論文 ”「般若心経」は中国偽経か?”を翻訳され紹介されている。(三康文化研究所年報・第37号 2006年)
この論文を基にして、般若心経が生まれた経緯を説明して下さるのだ。

般若心経が編纂される一つの仮説として、鳩摩羅什訳「摩訶般若波羅蜜」等に基づき、玄奘が「般若心経」を撰述しまとめ、それを更にサンスクリット語に訳し直した、とする論なのだ。
仮説を立証するための数多くの検証項目が取り上げられており、「般若心経」がインドで編纂されたものではなく、梵本「心経」も漢訳「心経」も玄奘によるもの(中国偽経)だという説には
優れた説得性が感じられた。

玄奘はインドへの求法の旅の折、災難に逢うたびに「心経」を唱え難を逃れたという。
この「心経」を現地インドでサンスクリット語に訳し直してインドの仏教信者に伝えたとすれば、「仏教東漸」説がもっぱらだが経典の伝搬には東から西へという方向が生まれたことになり、その双方向性が面白い。
インド仏教経典の偽造者としての玄奘三蔵。素晴らしい仮説ではないか。

サンスクリット語原本での「大品般若経」と「心経」の比較から、「心経」のサンスクリット語原本は中国語の「心経」を逐次訳したものに違いない(還梵)と論証されるが、この辺りはもうお手上げの世界だった。
それにしてもこれほど面白い講座は初めてだ。
「般若心経」編纂にはいろんな謎が秘められているというからもっと聴きたい講座だった。
 
ギャーテーギャーテー ハラギャーテー ハラソーギャーテー ボジソワカー。

昨日の若い雲水さんも真言を唱えているだろうか。