鬼子母神とザクロ

後期から始まった六回の講座「シルクロード仏教史料を読むー法顕伝ー講読」(講師・山田明爾龍谷大名誉教授)も今日で終講だ。

法顕が求法の為に長安を出てから天竺に到着するまでに六年の歳月を要している。
今回まで読んできた法顕伝は、長安を出発してからタクラマカン砂漠越えなどの苦難の旅を経て、インダス上流へ通ずる要衝の地タシュクルガンに到るまでのほぼ三年分、一四年の旅からすればほんの序の部分までである。

法顕が書き記している国々の地理風土、習俗、産物、宗教行事等など、一字一句まで克明に解説しながらの講座なのだ、久しぶりに毎回わくわくしている。
法顕伝全文を読み終えるのに一期六講座として後何回の講座が必要だろうか。

竭叉国(タシュクルガン)の産物についての記述、草木果実は漢の地と全く異なるが、竹、石榴、サトウキビの三物のみが漢の地と同じだ、という箇所の石榴の説明では、古代インドの樹木信仰(巨樹信仰の一つの樹としてのマンゴーの樹、この樹は沢山の実を付けることから多産・豊穣として信仰される)とハーリティー鬼子母神)との関係、子供を喰らうハーリティと釈迦との関係にまで話が及ぶ。
最初はハーリティー鬼子母神)に結びついていたのはマンゴーだったが、この説話が中国に到るまでの国々にはマンゴーの木がなく、1つの実の中に粒粒の多い石榴に置き換わっていったこと。この話の続きには小林一茶が詠んだ句の「我が味の石榴に這わす虱かな」の話まで出てくるのだ。
鬼子母神とザクロの話は承知していたが、ザクロの前がマンゴーの実であったことや一茶が我が血を吸っている虱を殺すに偲びずザクロの実の上に放したなどということは知らなかった。

いやはやなんとも言えぬ楽しい講座なのだ、来季の講座が待ち遠しい。