飛行機雲

突然ですが遅まきながらの寒中お見舞い申し上げます。
こんな書き出しで始まるメールを受け取った。
差出人は仕事関係で知り合った旧い知人のMさんだった。
リタイアして以来人の輪を意識して縮めていたので、懇意にしていたMさんともいつの頃からか音信不通になっていた。
そんなMさんがあることで私のアドレスを知った経緯や近況、それに共通の友人だった二人(彼等とも音信不通)の現況が記されていた。
メールを読みながら懐かしさと言うよりも、音信不通にしてしまっていたことでの戸惑いを感じていた。

夕方遅い散歩に出る。
普段は余り気に止めることもない飛行機雲を意識しながら見上げていた。


Mさんが知らせて寄こした共通の友人だったKさんは若い頃小説家志望だった。
何人かで作った同人誌を持っており、それに発表していた短編小説を読んだことがあるのだ。
詳細は思い出せないが、兄嫁に対して淡い恋心を抱く少年の心情を描いたものだった。
その題名が「飛行機雲」だったのだ。

MさんもKさんもそしてもうひとりの知人も、どんな老い方、どんな風貌になっているのだろうか、飛行機雲を眺めながら昔のことを思い出していた。
ヨボヨボ、ヨタヨタ、そんな老い方とは縁遠いようだし、呆けてもいないようだ。

飛行機雲が空にいつまでも消えずに残っている時は天気が崩れる予兆だという。
明日は雨だろうか。