残り菊

厚手のダウンジャケットを着ての夕方の散歩だったが、風の通り道に立ち止まったりすると身震いする寒さを感じていた。
今冬一番の寒さのようだったがいつものコースをはずれてPUKUさんと遠回りのコースにする。
それにいつものようなゆっくりした歩きではなくかなりの早足だ、息切れしていた。
ますます歳を感じさせられる。

北西の冷たい風が吹き荒れる畑の片隅で菊の花が咲いているを見付けた。
残り菊だろうかそれとも初冬の頃まで咲くように品種改良された菊・晩菊だろうか。


私にはそのいずれかは判断できないでいたが、気分としては残菊の方がすっきりする。

もう随分昔だが、永源寺ダム上流へ晩秋の山を撮りに行ったことがある。
その帰り道、小さな畑の隅で畑の手仕舞いの為の枯れ草が燃やされているのを見た。
老夫婦らしき人影が作業をしているのだ。
私は畑に通じる細道に突っ込むようにして車を止め畑へ駆け上がった。
白い煙を上げ燻ぶりながら燃えていたのはトマトやナスの枯れ木であり、萎れ色褪せた白や黄色い花を残している沢山の菊だった。
白い煙、燻ぶりながら燃えている火、老夫婦、それに火の中の残菊、格好の被写体だった。

残念ながらこの光景は撮れなかったのだ。
持ち出していたフイルムはサブカメラのものも含めて全て使い切っていた
現在のデジカメだったら一部のデータを消すことで対応できるが、フイルムでは如何ともし難いのだ。こんな苦い経験からフイルムはいつも一本多めに持ち出し、それは使わないでいた。
残菊の燃やされる光景をもう一度見てみたいものだ。

  残菊やふたたびめぐり逢いしとき    万太郎