居眠りもならず

「無常から刹那滅へ」の2回目の講座のある日だ、講座の始まる前に龍大ミュージアムを見学するつもりだったので早めに家を出た。訪ねてみると展示品の入れ替えに当たっていて休館日だった。
講座まで2時間近くあるのだ。欲しいレンズを見に駅前のヨドバシカメラまで引き返そうと歩き始めたが途中で面倒臭くなる。
近くにあったコンビニでハムサンド、ゆで卵、缶コーヒーを買い求め大宮キャンパスに戻る。

人気の少ないキャンパスの一角に腰を下ろしサンドイッチで遅い昼食だ。

側縁の石畳に座り込んで呆けたように空を見上げていた。
建物に区切られた青空を白い千切れ雲が流れてゆく。「おおい くもよ、ゆうゆうと ばかにのんきそじゃないか、どこまでゆくんか・・・」詩人の名前は思い出せないがそんな詩の一説を思い出し小声で口ずさんでいた。
2時間近く放心していたのだ。

講座はやはり難しかった。
釈尊の最後のことば」から「死」「無常」「刹那滅」のことを話してくださるのだが、老兵の持っている知識と理解力では話についていけないのだ。
輪廻転生も六道のことも有頂天から地獄へ落ちることも嚥下出来ずにいた。

難しい講座の時は決まって居眠りするのに居眠りもならず講師を睨んでいた。

帰り道、唐門(国宝)の上に流れる雲を見る。
極彩色の唐門と雲の流れを魚眼で切り撮ることも面白いのではと思っていた。