かすみ網

比良山系霊仙山麓の棚田道を歩いていた時、意外なものに引っ掛っているカブトムシの死骸を見た。稲掛(はさぎ)を設えるために植えられている木に、かすみ網が張り巡らされていて、それに2匹のカブトムシが絡め取られているのだ。

このかすみ網にはカブトムシの他は何も絡まってはいなかったが、鳥を狙っていたとしたら明らかに刑事罰の対象になる行為のはずだ。
網を張ってからかなりの時間が経っているのか、縺れ合ったり破れたりしていて、今では鳥が絡み獲られる状態ではないが、網が新しい時には鳥たちが密猟されていたかもしれない。

人っ子一人いない棚田道、時折吹き降ろしてくる冷たい比良颪が木々の梢を揺るがせている。

5月になればこの棚田道の下の田圃にも人が戻って来るのだろうか。
秋には棚田道の木に稲架木が設けられ、刈り取られた稲が天日干しされるのだろうか。
かすみ網というぶっそうな物を見るより、人の気配のする光景を見たいものだ。