アゲハの羽化

ホームベーカリーの準備を終えて書斎に戻ったのが午前0時を少し過ぎた頃。
飼育箱を覗き込むとサナギの腹周りがやや大きくなり色も黄緑に変わっている。
いよいよ羽化が始まる予兆だ、飼育箱から取り出す。

取り出して1時間近くは何の変化もなかったが、しばらくしてからサナギはプルルンと体を震わせた。
体の震わせ方は、最初はプルルン、それから30分してプルルンプルルン、羽化を撮るのは初めての経験だから、もうすぐにでも羽化が始まると思いカメラのセットに大わらわだ。
それからまたしばらくして、今度はプルンプルンプルンと小刻みに体を震わせている。
この後は何の変化も動きもなく時間が経過していく。

羽化が終わってアゲハが飛び立つまで付き合うつもりで、眠気覚ましのコーヒーと読みかけの「土の文明史」を用意し、何らかの変化があればすぐにシャッターがきれるようにとリモートスイッチも準備した。
本を読みながら区切りのいいところで目を上げてサナギを見る。
いっこうに変化も動きもないまま午前3時になった、さすがに眠い。
羽化のことを調べていた時、誰かのブログで羽化は明け方に始まることが多い、という記事を思い出して、少し眠ることにした。

午前4時に目覚めてサナギ見た時も変化なし、カーテンを開けると薄明の琵琶湖、すぐに寝る。

「蝶が生まれていますよ」
カミサンの声に起こされて急いで書斎に入る、完全にサナギの殻から出て、蝶になっている。
午前7時34分に最初のシャッターを切る

サナギの背中が割れそこから蝶が姿を表してゆく全容を撮りたかったのに、残念だ。

カミサンも私の撮影意図を承知しているので、ヴェランダで洗濯物を干しながら2度ほど手を止めてはサナギの様子を見ていてくれたようだが変化がなく、3度目に見たときは蝶になっていたとのこと。
「意外に産まれるのが早いのね」

アゲハが窓の外に飛び立っていったのは、午前10時5分。

長い付き合いの一日だった。
もう一匹の幼虫も大きな体躯になっている、蛹化も近いことだろう。
今度は今回の経験から万全の準備をして、背中が割れ始めるところから飛翔前の体を軽くするためのオシッコの排泄もきちっと撮りたい。