我も老い彼も老い

鳥撮りの機材一式を後部座席に放り込み湖岸に出ようと、住宅地の坂道をローギヤにしてゆっくり下りていて、おっ!と思う光景を眼にした。タクシーを下りたYさんがよろよろと自宅玄関先に向かって歩きだしているのだ。背を丸め、腰は曲がり膝も曲がり、だらんとおろした腕をブラブラさせながら歩いている。往時の精悍な巨躯の面影は全く無い。何と言う変わりようだろうか。Yさんは私より一歳年上、昨年の初夏の頃に見かけた時は矍鑠としていたのに、僅か半年足らずで変わってしまっているのだ。我も老い彼も老い、自分がYさんのような歩き方になるのも、もうそんなに遠くはないだろうな、そんな事を考えながら運転していた。

風もなく穏やかな陽射しの和邇川河口の駐車場には、四日市ナンバーや奈良ナンバーの車をふくめて13台の車、沖合のバスボート1隻、渚には5人のアングラー。

鳥は河口で数羽のカモを見かけただけで沖に水鳥の姿を見ることはなかった。

ファインダーを覗きながら、我も老い、よたよた歩き、そんなことをしきりに考えていた。