ショウリョウバッタ

午前6時前、寝室の窓を開けるとけたたましい蝉の声が飛び込んでくる。
台風一過の爽やかな朝だ。
台風11号は各地に甚大な被害をもたらしたようだが、比良連山山麓では幸いな事に大きな被害もなかったようだ。家の周りの後片付けをした後、いつもの草叢へ入ってみる。


この草叢は背の高いススキやクサハギなどが密生しており、それに風除けになる樹もあるから、此処に逃げ込めばチョウやトンボたちの格好の避難場所になるのではと思ったりしていたのだが、チョウやトンボの姿は全く見かけずだった。

見かけたのは、ショウリョウバッタ、イナゴ、カマキリ、シオヤアブ、カナブン、イチモンジセセリヤマトシジミカメムシの仲間、それとかなりの数のキリギリス、ジョロウグモ等だった。

今日見付けた虫の中でショウリョウバッタは川魚釣りと結びついた記憶がある。

少年時代、ガキ大将に連れられて行く時の川魚釣りのエサはシマミミズが主だったが、エサが失くなると「キチキチを獲ってこい」等と命令されて草叢でショウリョウバッタを探したものだ。
イナゴやツチバッタは捕まえにくかったが、ショウリョウバッタは比較的捕れやすかったことと、その体が大きかったことがエサとして一番良かったのだ。
ショウリョウバッタの胴体は三つくらいに引き千切った。このエサでフナは釣れなかったが、ウグイやハヤなどがよく釣れたことを憶えている。

釣った魚は河原で焼いて喰うのが常だった。
あの頃、ガキ大将ほか何人かは肥後守、マッチ、それに新聞紙に包んだ塩をいつも持っていた。
時には川魚と同時に河原の畑から頂戴してきたサツマイモや落花生が火に投げ入れられることもあった。塩味で喰う魚や落花生の何と美味かったことか。