栗の花

郵便物を投函するためポストまで直行せずに遠回りする。
炎天下物好きにも遠回りとは、と思いながらも、空き家になっているお宅の庭の栗の花が最盛期だと思い出し、足を延ばすことにしたのだ。


この栗の花ではこれまでに、ヒメアカタテハ、コミスジ、ヒオドシチョウ、トラフシジミなどを見かけたことがあったから、もしやなにかが来ているのではと期待しての遠回りだった。

残念ながらチョウたちの姿は無かった。
いたのはカナブンの仲間、アシナガバチハナアブの仲間。
庭先に入り栗の木の下まで近づければ、アシナガバチが花房を囓っている様子も面白いかもしれないが、無断侵入もならずだ、早々にその場を離れた。

虫撮りが目的だったら栗の花にも近づけるが、栗の花は余り好きではないのだ。

この花独特の青臭いニオイ、爽やかさの欠片もないどろんと淀んだようなニオイ、気持ちが悪いのだ。
「おお、ジョセフィーヌ」などと下ネタの小話に出てくる程だからだ。


裏山にも柴栗の木が何本かあった。
その木でカミキリを見たことがあり、食害の痕もあった。
栗の木はその幹を食い荒らされ続けているのだろうか。
今も枯れずに花を付けているだろうか。

小さな栗の実を拾いに出かけなくなってもう10年以上が経っている。
いろんな事を思い出しながら人影のない昼下がりの道を歩く。