アズキを煮る匂い

夕方の散歩の途次サザンカの花を見ていて、ほのかに漂ってくるアズキを煮る匂いを嗅ぐ。
何とも言えず食欲をそそる匂いだ、それに随分久しぶりに嗅ぐ匂いなのだ。

以前はカミサンが年に何度かはアズキを煮ておはぎ等を作っていた。
ことに石油ストーブに火が入り始める頃になると、アズキを煮るのに最適とばかりに鍋を載せていたものだが、暖房がエアコンに変わったことと、歳の所為だろうか、ここ2.3年アズキを煮ることがなくなっているのだ。

美味い手作りのおはぎが喰いたくなっている。
アズキと三温糖ともち米を手に入れなくてはなるまい。
カミサンのように上手くアズキを炊く事が出来るだろうか。

アズキを煮る、カミサンは砂糖を入れる前煮の段階で、沸騰すれば煮汁を捨てて新たに水を加えて煮るといういわゆる渋切り処理を何度も行っていた。
この作業がつぶあんにした時のアズキらしい甘い匂いを作り出していたのだろう。
時には、渋切り処理を手抜きして少し変なニオイのする口当たりの良くないあんこも作ってはいたが。
サザンカの花にレンズを向けながらアズキを煮てみようと考えていた。

アズキといえばもう一つカミサン手作りのものがあることを思い出していた。
アズキを中に入れたカメラピロウだ。
虫撮り時などのローアングルではレンズを地面に押し付けて撮っていた。
レンズを地面に押し付けるようにして撮る、この撮り方はけっこう厳しいのだ。
ローアングル可能な三脚が欲しかった。
しかし買える余裕のない頃だったから、カミサンに頼んでピロウを作ってもらったのだ。
このカメラピロウも使わなくなってからかなりの歳月が経っている。

アズキの煮える匂いを嗅ぎながらいろんな事を思い出していた。