冬の毛虫

北西の風が夜半吹き荒れたのか家の前は落ち葉の山だ。
階段にも、庭先の枯れ残ったままになっているタカサゴユリからの種が吹き寄せられていた。

拾い集めれば掌一杯になりそうな量が落ちていた。

夕方風の止み間を待ってPUKUさんと早目の散歩に出る。
目指す場所は南斜面のいつもの畑だ。
冷たい風の当たらぬ土手にもしかしたら虫がいるかもしれないとの淡い期待からだ。

風の当たらない土手下の陽溜りは暖かい感じだったが、さすがに虫の姿は見つからなかった。

カタバミの黄色い花が点々と咲いているのを見付け、ヤマトシジミの幼虫が齧った食痕の名残や卵を丹念に探して見たが見つからずだった。

この南斜面の土手には11月半ば過ぎまで沢山のヤマトシジミが集まって来ていた。
それに求愛行動を繰り返している姿も見かけていたから、もしや卵がそんな期待をしていたのだ。

畑の下の道で黒褐色の毛虫を見付ける。
クマケムシだ。

毛虫界では一番のスピードランナーと言われるだけあって、速い動きで目の前を横切って行く。
この寒空なのに初夏に見かける時と変わらないスピードなのには驚かされる。
クマケムシ(ヒトリガの幼虫)はこの姿で越冬するのだ。

足早に道を横切って落ち葉溜まりの方へ行く冬の毛虫を眺めながら、もし童話作家だったらどんな物語を紡ぎ出してゆくのだろうかと想像していた。
北風の中を黒い豪華な毛皮のコートを纏ってさっそうと歩いているのだ。