空蝉

涼しいうちの朝の散歩と思いながらも8月に入ってからは実行できないでいたが、今朝は曇り空の所為もあり、7時過ぎに散歩に出た。
ご近所の庭先でタカサゴユリに掴まっているアブラゼミの抜け殻を見つけた。

風に吹かれてその空蝉はゆっくりと揺れている。
白いユリの蕾に掴まっているのは抜け殻だと分かっているのに、風に揺れているその姿は動いているように見え、生命が次の形に変わろうとしているような錯覚を感じさせた。

4年程前、芙蓉の花を撮りに山科(京都市)のある寺に行ったことがある。
芙蓉の花にはまだ早かった。
芙蓉の花に来るオオスカシバやスズメガの仲間を期待していただけに、花の時期を間違えたことに、お前さんも歳ですねと自嘲していた。
その折薄暗い参道の石段横で一本の木の枝に空蝉が並んでいるのを見つけ、取り敢えず手ぶらで帰らずに済むことで自分を慰めたことがある。

この4年前のファイルのメモ欄に俳句が2首書き込まれている。
空蝉のことを調べていてこの俳句を見つけメモ欄に書き込んだのだろうが、その時どんな心境だったのか思い出せないでいる。

  空蝉を妹が手にせり欲しと思ふ     山口誓子

  寂しさにころげて見るや蝉の殻     正岡子規