野の佛たち

何気なく見ていたものがふっと記憶の中の光景や物事に結びつき、鮮やかに脳裏に浮かんでくることが最近多くなっている。
こんな現象は残された時間よりも過去の時間の方が多くなってしまった老人の性だろうか。
未来の時空を耕しいろんな種を蒔くよりも、過ぎ去った時空を掘り起こして思い出を食っている、これも老兵にとっては日々の糧だと思わざるをえないのだ。

今日も運動不足の解消の為に長い散歩に出た
その道すがら山際の畑の片隅に石の佛を見つける。
長い間風雨に晒されて顔かたちもはっきりしない佛たちだ。丸い川原石を積み重ねたような3重の塔石もあった。そしてそのいずれにも花が供えられていた。

この野の佛たちを見た時、もう随分昔、知人のSさんのお供で野の佛を探して歩いたことがある。
湖西地方でも旧い集落の一つ仰木の里やそれを取り巻く棚田道を歩きまわったのだ。
私がSさんとご一緒したのは2度ほどだったが、Sさんは相当の時間をかけて野の佛や昔の京道の名残を探して湖西一帯を歩いていたようだった。

お盆の石仏千体供養にご一緒したこともあった。


そんなSさんも今はいない。

虫撮りに出かけた時には野の佛たちのお姿も撮ってみよう。
Sさんの撮っていた雪を冠った野の佛たち、れんげ畑の佛、あんな見事な写真を狙ってみたい。