ヤママユガの繭

金曜日あたりから急激に寒くなるという気象予報だったので、寒くならないうちにと家の周りの片付けを始めていて、金木犀の落ち葉の下からヤママユガの繭を見つけ出す。
今年の7月の終わり頃にマキノの雑木林に潜り込んでいた時クヌギの木で見つけた繭だ。
羽化前の繭だったのでヤママユの羽化が見られると思い持ち帰ったものだ。
羽化の様子を撮る為なら書斎の飼育箱に入れているはずなのに金木犀の木の下で見つけるとは。

思うに撮影に出かける時は機材をザックにきちんと収納しているが、撮影帰りはカメラもレンズも三脚も車の後部座席に放り込んだまま。ペットボトルやおにぎりのゴミもある。
こんな状況だから車から機材を下ろし玄関まで運び入れるのに階段を何往復もしている。
こうした時にヤママユガの繭を何処かに落とすか置き忘れたのだろう。

その後もヤママユガの繭のことを思い出す機会は何度かあったはずだのに全く失念していた。
ヤママユガのポートレイトを撮った時などに繭のことを思い出していてもよさそうなのに。

金木犀の木の下で見つけた繭にはヤママユガが羽化していった痕があった。
このヤママユガの繭を書斎に持込み古い記憶を辿っているが思い出せないでいる。

古い記憶、思い出せない事柄も或る日突然思い出すことがある。
ご近所のITOさんに頂いたハバネロをヴェランダで陰干しにしていて、陰干しにしていることを忘れていた。気がついた時はカチカチに干からびていた。
その干からびたものの名前がどうしても思い出せず、思い出せないまま書斎に取り込み、今もその一つが壁に掛けてある。
その干からびた物体を見る度に何という名前だったかと考え続けていた。
長い時間が経った後不意にそれがハバネロと思い出したのだ。
壁に掛けてあるのは思い出した記念みたいなものだ。

ヤママユガの繭のこともある日不意にその時の事情を思い出すかもしれない。