路肩に車を停め、三脚の一本を伸ばして杖代わりにし草深い田んぼの畦道を歩いていて、耕作放棄地の近くの田んぼにキジがいるのを見つける。久しぶりのキジに嬉しくなるが、600mmではキジは小さな点でしかない遠い場所、あぜ道の枯れ草に足をとられないように用心しながら接近を試みる。
接近してみると、稲刈り後に再び芽を伸ばした稲孫(ひづち)田に2羽のキジがいた。
距離を縮めるるにつれ1羽はそそくさという感じで田んぼを横切り、近くの草叢に入っていく。
残った1羽はまだ若いと思われる小柄なヤツ、7・8m近くまで間合いを詰めたが、悠然とこちらを見ている。好奇心旺盛な若者のようだ。
初夏の頃のような母衣打ちなどの振る舞いは見られないが、晩秋の陽射しの中に三脚を据え、コンビニで手に入れたホットコーヒーとローストアーモンドのフロランタンを味わいながら、小半時コヤツを眺めていた。
雲に陽が隠れると肌寒くなり始めたので、三脚からカメラを取り外しにかかると私の動きに合わせるかのようにヤツも耕作放棄地の草叢へ向かった。
人の気配のない田圃道の草叢に座り込んでキジを眺めていた、放心の小半時、いい一刻だった。