コンビニの駐車場に止めていた車の車載温度計は37度を示していた。殴りつけてくるような強烈な陽射しなのに今日は二十四節気の一つ立秋の日だ。秋の欠片など何処にもない。炎天下の門扉の前ではタカサゴユリが花開き始めている。
タカサゴユリから数段下の階段には羽化に失敗したアブラゼミが横たわっていた。
近くの金木犀の根っこあたりから這い出してきたヤツが、木にうまく掴まることが出来ずに転げ落ち、落ちたままそこで羽化を始め、殻から抜け出したものの翅を十分に伸ばしきれなかったのだ。
このアブラゼミの死骸にアリが来ることを楽しみにしていたが、訪ねてきた娘が猛暑に痛めつけられて落葉したツタの葉の多さに呆れ、階段周りの掃除をしてくれて、セミは姿を消していた。
秋立つや 皆在ることに 泪して 永田耕衣
病む妻は 秋の深まり 待っており 風来坊