ペーパーウエイト

書斎の片付けをしていて、書棚の奥に隠れているペーパーウエイトを見付け取り出した。
冷たくてズシリと重いブロンズ製のペーパーウエイトを手にしながら、いろんなことを思い出していた。

これを手に入れたのは30数年前、以来このペーパーウエイトはデスクの上に常駐していた。
現在ではほとんどのデーターや文書類がデータベース化され端末で覗けるようになっているが、当時は全てが紙に書かれていたからデスクの上でペーパーウエイトは必携だったのだ。
手に入れて以来リタイアするまでコイツはいつも目の前に鎮座していた。

このペーパーウエイトと同じように過去の情景と結びつくものが幾つか書棚に並んでいる。
手捻りの陶器の人形、越前焼の水滴、トウモロコシの葉で作られた人形、銅製のペン皿。
いずれも頂戴したもの、中には無理矢理に頂いたものもあるが。
これらの元の持ち主の当時の風貌や声音は朧でも思い出せるが、音信が絶えてから久しくなり現況は訊ねることが出来ない、どんな爺さんや婆さんになっておられるのだろうか。

老爺は暫くの間ペーパーウエイトを手にして過去を喰っていた。

雑木林でツグミを見た。