カノコガ

雨を避けるように玄関の庇の下にいる黒い翅に白い紋を散らしたガを見つける。

このガは珍しいガではなくこれまでに何度も見ているのに、レンズを向けている間もその後も、そのガの名前が思い出せないのだ。
Webの図鑑で検索すれば直ぐにも判ることだが、記憶の深みに沈み込んでしまっているこのガの名前を深みから引っ張り出す為に検索するのを止めた。

カノコガだ、と不意に思い出したのはTVで9時のニュースを見ている時、5時間近く経っていた。
こんな現象が少しづつだが増え始めている。
時には何日も経ってから突然思い出すということもあるのだ。

何もかもが劣化を始めているのですからしかたのない事ですよ、何日経とうと思い出せるだけで十分じゃないですか、自分に言い聞かせていた。

カノコガの幼虫は黒い毛虫だ、タンポポシロツメクサが食草だった。
これらの葉の上にいる毛虫を見付けた時即座にカノコガの名前を思い出せるだろうか。