時季不知

階段の石垣の石と石の隙間に根を下ろしていたタカサゴユリが花開いた


門扉の近くには大小とり混ぜて十数本のタカサゴユリが生えているが、いずれも花期はとっくに終わり、今では実鞘が大きく膨らんでいる。
こんな時季に仲間はずれのように咲くと、時季不知という思いがしてなんとも ”いとかなし”だ。

階段でこのタカサゴユリが芽を出しているのを見付けたのは、4年前の春だったと思う。
芽(葉っぱ)は細い糸状のものだった。それがやっとここまで大きくなり花を付けたのだ。

このタカサゴユリは蕾の時にはまっすぐ茎を立てていたが、花の重みと雨に打たれた所為で倒れてしまう。


石垣の隙間という土壌も殆ど無い悪条件下で育っているのだ。
花の重みを支えきるだけの根は張られていないだろう。いのちの強靭さを感じる。

時季不知のユリと言えば、朽木(村)のある集落で11月初旬の時雨に打たれているタカサゴユリを見たことがある。
紅葉撮りのロケハンに行った折、突然の冷たい時雨に遭い、車まで遠かったから軒下を借りたことがある。その時向かいの庭先に咲くタカサゴユリを見たのだ。
ドキッとする程の花の白さ、時雨の冷たさ、今も鮮明に憶えている。
この記憶と同時に、あれは本当にユリだったのだろうかと思うこともある。