クロスズメバチ

随分久しぶりにITOUさんの菜園に行く。
菜園の片隅にあるミントの花にクロスズメバチが来ていた。

クロスズメバチを見かけるのは不思議とこのミントの花の上でだ。

ミントは繁殖力が強いのだろうか、あちこちの空き地や放棄された畑などで野生化したミントが生い茂っているのをよく見かける。
そんなことと比例して、クロスズメバチをこの花で見かけることが多くなっているのだろうか。

クロスズメバチと言えば、後にも先にも一度だけその蜂の子を喰ったことがある。
知人のHさんに誘われて行った小さなバーで賞味したのだ。

幼虫やサナギそれに羽化直前と思われる蜂の子を空炒りして塩をまぶしたもの、醤油と砂糖で甘辛く煮付けたものなどが出された。

勧められるままに食したが美味いという感じではなかった。

クロスズメバチを撮りながら、Hさんのことをいろいろと思い出していた。
システムエンジニアをしていたHさんは普段は無口でとっつき難い感じの人だったが、仕事を離れてアルコールが入ると、穏やかで話上手な一面を見せることがあった。

暇を見つけては一人旅をよくしていたようで、各地の郷土食にくわしかった。
そんな縁で蜂の子もHさんの頼みだったようだ。

塩をまぶした蜂の子をつまみながら、Hさんは昆虫食のことや酒についての話をしてくれた。
信州諏訪に伝わる肉食の神の物語のことも話してくれた。

そんなHさんも故人になって十数年が経つ。
旧い知人はもう僅かになってしまっている、寂しい限りだ。