プラムの花とキアゲハ

プラムの花は今が盛りだ。
早く咲いた花は散り始めているからもう3・4日もすれば、白い花吹雪が見られるだろう。
キアゲハ、密蜂、キアシナガバチ等がプラムの花に来ているのを見つけ、暫く吸蜜活動をしていてくれることを願いながら、カメラを取りに書斎に駆け上がった。
この僅かな距離の行動にハァハァいっている、なんという体力の劣化だろう、情無くなる。


プラムの木に戻ってみると、密蜂やキアシナガバチの姿は見当たらなかったが、キアゲハは花の上にいてくれた。

大阪へ出掛ける電車の時間が気にならなければ、密蜂やキアシナガバチが帰ってくるのを待ったり、キアゲハの飛翔などを時間をかけてじっくり撮りたかったがそれもならずだった。

半年ぶりの大阪だ。
リタイアして10年、年に2回の会社OB懇親会と株主総会出席で大阪へ来るくらいだから、その間の街の変わり様に戸惑いを覚え、見知らぬ街を歩く妙な不安と怖れがあった。

懇親会が終わって北新地から梅田の地下街に入り、JR大阪駅へ向かう時、近道をしようとある角を回って暫くあるいていて方向感覚を失う。
案内表示板を見ても知らない通りの名前が並んでいるから、昔のように地下街の全体像がイメージ出来ないのだ、まさしく迷宮都市にいるようだった。
四方八方に延びている道、現役時代に見慣れていた店や屋号などがあればそれなりに立ち位置も分かるだろうが、それらのお店も屋号も全く見当たらない。
10年という歳月は全く異世界を作り上げていた。
異世界の中では自分の立っている現在位置が何処なのか皆目見当がつかないのだ。

急いで帰宅する必要もなかったからあちらに曲がりこちらに曲がりと、雑踏の中を30分近く彷徨っていた。
雑踏の中を歩くのはいいのだが、ぶつかりそうになって行き交う人から気味の悪い気配が発せられているようで、時にゾクッとすることもあった。

雑踏の中をふらふら歩きながら、いつだったかTVで見たモロッコ世界文化遺産都市フェズの旧市街の様子を思い浮かべていた。
メディナと呼ばれる街区をさして迷宮というが、ここ梅田地下街も私にとっては迷宮そのものだった。
迷宮、ラビリンス、異次元の世界。
比良連山山麓に住む年老いた虫撮り人にはここは最も苦手な場所だ。